米国雇用情勢と為替レート
米国雇用統計の数字(結果)はそのままユーロ・日本円の値動きに大きく影響し、他通貨にも影響を及ぼします。
一般的に米ドル/日本円相場に影響を最も及ぼすものは、日本側の経済要因よりも市場規模の大きい米国の経済要因による影響の方が絶大だと言えます。
米雇用統計は「第一次推計値」
米国の経済統計の中でも、最も注目を集めるのが、米労働省が毎月発表する米国雇用情勢(Employee Situation)です。
一般的には「雇用統計」と呼ばれていますが、その単語(Situation)の意味からも分かる様に、雇用の状況を段階的に発表していくことになります。
世間が注目し、「雇用統計発表」とされているのは、原則月初めの第一金曜日(2018年10月は5日)に発表される「第一次推計値」の事を言います。
この第一次推計値の情報収集の方法は、労働統計局によって準備された全米調査票によって、調査月の「12日を含む週の労働調査」を中心にデータを取り、12日を含む週(調査)終了から3週目の金曜日に、第一次推計値が発表されます。
第一次推計値での調査票回収率は60%を目途とされてます。
この雇用情勢推計値(一般的にいう雇用統計)は、次の月、またはその次の月と数度に渡って改訂される事が多いですが、それはこの全米調査票の回収率が要因となっています。
60%の段階で一次推計値、次の月の改訂値は、調査票回収率は80%、その次の月には90%の回収率となっています。
我々が目にして一般的にいわれる「雇用統計」の数字は、最初の速報値と言う事になります。
更には、年間のベンチマークは毎年6月に改訂される事になりますから、あとから数カ月前の統計を確認してみると、実はかなり違った統計値になっている場合がほとんどです。
市場から注目される「非農業部門雇用者数」
この米労働省の雇用情勢の中で、市場から最も注目されるのは、毎月の「失業率(unemployment rate)」と「非農業部門雇用者数(Non-Farm Payrol)」です。
失業率の調査対象地域は全米50州にも及びます。以前は企業調査はなく、家計調査のみであり、その対象世帯も数万世帯にも及んでいました。
近年、調査方法に企業調査も含まれるようになり、非農業部門雇用者数が失業率よりも注目される傾向にあります。
(非農業部門に属する事業所の給与支払い帳簿を基に集計されたものです。自営業、農業従事者を含まず、対象事業所は約40万社・従業員数約4700万人で、全米の約1/3を網羅)
「良い失業率の低下」と「悪い失業率の低下」とは?
失業率の計算はとても簡単です。
(失業者÷労働力人口)x 100 で算出されます。
労働人口:
16歳以上の人口から軍人や施設収容されている人々などを除いた人数のうち、就業者と完全雇用者(就業していないが、就職活動をしている失業者)の合計です。
簡単に言うと、16歳以上の一般人口の中から、就業者と就職活動を行っている人々の数。
問題点は、その人口に占める失業者の割合が失業率、になりますが、世の中が不況のさ中においては、初めから就業自体を諦める人達が増加する傾向にある事は通常の事です。
その様な時には、分母である労働力人口および、分子である失業者数がともに減少してしまいます。就業を諦めた人達(求職意思喪失者)が増加する事によって、失業率は低下する事になってしまうのです。
例えば、仮に労働力人口が1000万人で、失業者数が100万人いたとすると、失業率は「10%」です。
これが不況で就職先がなく、求職意思喪失者が20万人増加したとすると、労働力人口および失業者数は共に20万人減少する事になります。
その結果、労働力人口は980万人、失業者は80万人と言う事になり、数字上の失業率は10%から8.16%に減少する事になるのです。
雇用統計の時に失業率も発表されますが、失業率が低下したとしても、それが求職意思喪失者の増加によってもたらされたものであれば、「良い失業率の低下」とは言えません。
逆に、経済回復の下、求職意思喪失者が減少したとなれば、失業率は高くなる傾向にあります。これは就職戦線に「就業意欲のある人が戻ってきた」と言う事で好感される事もあります。
非農業部門雇用者数の増減と為替レート
雇用統計発表の日(ほとんどが月の第1週金曜日)には、非農業部門雇用者数が発表され、世界中の市場参加者から注目されます。
市場予想より高ければ米ドルは買われ、市場予想を下回れば米ドルは下落する傾向にあります。
発表の日は、雇用統計の結果発表と同時に為替レート自体が上下に振れる傾向があり、予想外の数字発表で為替レートも大きく振れることがあります。
予想はエコノミストでも当然難しく、市場参加者は警戒感を持ってトレードする事が重要です。
失業率低下と非農業部門の雇用者数の増加は当然景気回復とみなされ、中央銀行であるFRBの利上げに対する思惑が生じて来ます。
その結果、通貨(米ドル)が買われることになり、米ドルが買われれば、メジャーカレンシーであるユーロおよび日本円は相対的に下落してしまいます。
その基軸通貨である米ドル動向は、他通貨にも当然ながら影響がでるので、アメリカの雇用統計は、世界の金融市場から最も注目されている統計だと言えます。
一般に、非農業部門雇用者数における月々の増加数は、景気が好調とされる目安は「+20万人から+25万人」と言われています。
過去、25万人~30万人以上の数字がでると、米ドルは強い上昇を見せる傾向がありました。
2011年12月から2018年8月までの81回の中で、25万人以上の数字が発表されたのは、
2014年4月28.8万人、6月28.8万人、11月32.1万人、12月25.2万人
2015年1月25.7万人、2月29.5万人、5月28.0万人、10月27.1万人、12月29.2万人
2016年6月28.7万人、7月25.5万人
2017年10月26.1万人
2018年2月31.3万人
13回でした。
明日発表の米国雇用統計、
事前予想は、非農業部門雇用者数 9月予想 18.5万人(8月は20.1万人)
失業率 9月予想 3.8%(8月は3.9%)
果たして明日の結果は???
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