リスクヘッジとリスクテイクでは、為替相場への取り組み方や方法が大きく異なります。
為替取引を行なう三つの理由として
1.需要
つまり実際に発生する実需であり、必要性のあるものです。海外旅行で、訪れた国の通貨などになるのでしょうか?例えば、統一通貨であるユーロが導入される前にEU(欧州連合)加盟国を周ると、訪れた国の数だけ通貨の種類があり、必要でした。
隣の国へ入国したら、そこでは前の国の通貨は基本的には使えず、仮に現地通貨に交換しても為替レート自体良くなく大きく目減りしたものです。
隣国ならともかく、離れたEU諸国での交換では通貨の交換手数料や為替レートの変動などで半分になってしまう事もあり得ました。でも、それでも必要な場合は、外国為替取引をしなければなりません。
2.外国との経済活動
経済活動により生じる外貨の債権(受取り)や債務(支払い)の価値の変動を防ぐためです。
例えば輸出業者は、モノ(商品)を輸出して、3ヶ月、4ヶ月先に代金を外貨で受け取ります。
その期間に為替レートが変動すると手取りの円の金額が大きく変わってきます。これは為替レートリスクで、期間が長くなればなるほどそのリスクは増大します。
これらを防ぐために、適当な時期に将来受け取るである外貨を先物で売って、円の金額を確定しなければなりません。この為替レートリスクを抑えるために行なう取引がリスクヘッジです。
3.リスクテイクの為
一方、損失の可能性が有りながらも、逆に為替の差益を求めておこなう取引です。
外貨預金(レバレッジ1)、FX取引(レバレッジ1以上)をする人は、為替の差益を狙いながらも差損になる可能性を覚悟しながら為替取引をしています。
外国為替市場の9割以上がこれらの取引になります。
損失を防ぐか? 利益を狙うか?
外国為替取引をすると言っても理由は異なり、それによって取引に対する取り組みや戦略は違ってきます。
リスクへッジをする場合、為替レートリスクを抑えるための工夫が必要になります。その為にはどんなヘッジ方法があるのか、などを知る必要があります。
一方リスクテイクをする場合、為替レートの変動の方向性や値幅に関心を示し、それを的確に捉える事が必要になります。その為には、為替レートの変動要因や予測方法、さらにマーケットや通貨の特徴なども知る必要があります。
プロのヘッジファンドから見たリスクヘッジとリスクテイク
ヘッジファンドはその名の通り、常にリスクをヘッジする(防止する)ことを意識して投資を行ないます。
リスクには様々な種類がありますが、株式投資での運用において大きなものに個別企業リスクと市場全体リスクがあります。
個別企業リスクについては、例えば東京電力・東芝やシャープなどのような安定企業と思われていた会社が突如として経営危機になる場合があります。
市場全体リスクはリーマン・ショックのような世界的な金融危機が挙げられます。
インデックス投資では市場リスクをそのまま全面に受けてしまうため、不況時には時価が大幅に下落してしまいます。
一方、ヘッジファンドでは分散投資によって個別企業のリスクを抑え、空売りや指数の先物・オプションを使ったショートポジションを形成することによって市場リスクを抑えてます。
分散投資によるリスクヘッジ
主に個別企業リスクを抑えるために、例えば株式に投資する場合、全ての資産を1社の株に投資するのではなく複数の銘柄に分けて投資をします。
これによって投資した会社が偶発的な理由によって大きく株価が下落しても、ポートフォリオ全体としての下落幅は限定的になります。
しかしながら過剰な分散投資は収益率を減少させることに繋がるため、適切な銘柄数に制限し分散と集中のバランスを取ってポートフォリオを形成する必要があります。
指数先物・オプションの活用によるリスクヘッジ
リーマン・ショックのような市場全体の下落に備えて、TOPIXや日経平均株価の先物やオプションを活用してポートフォリオ全体の下落リスクを回避します。
ポートフォリオの構成内容にあった指数を採用し、投資金額全体をカバーすべくショートポジションを保有したり、指数との個別銘柄の相関性を加味した手法(ベータ・ヘッジ)を採用したりします。
マーケット・ニュートラル戦略においては市場リスクを完全に排除することを目指します。しかしながら市場リスクを抑えることができる反面、好況時の収益機会を逸することになってしまいます。
リスクヘッジとリスクテイク
リスクが全て悪いものであるかの様に、全てのリスクをヘッジすることは必ずしも望ましいとは言えません。
例えば指数のショートポジションを持つ場合にはポジション形成にコストがかかるため、その分収益率を悪化させます。
また好景気にマーケット・ニュートラル戦略で投資をしていては千載一遇の収益チャンスをみすみす逃すことになります。
優れたファンドマネージャーは個別銘柄の分析はもちろんのこと、世界中の政治・経済状況や金融市況、他の投資家マインドを把握し、適切なリスクヘッジと積極的なリスクテイクのバランスを取れる判断力が必要です。
投資のおける「攻め」と「守り」の両方を、それぞれのバランスを考慮しながら取り仕切る能力が必要です。
ブレイクタイム
「所詮、プロのファンドマネージャーも人の子」
仕事では、「現物を買ったら先物を売る、現物を売ったら先物を買う」や、含み損が15%を超えたらポジションを一旦クリアにするなど常にリスクを念頭に置きながら資金を運用するプロ達。
しかし、自分のポートフォリオは仕事と同じく出来ないが人の常です。
含み損を抱え、損失額が拡大しても、「相場は戻るはずだ」としてポジションを一旦カットし、損失をなかなか確定出来なかったり。
また、株でリスクヘッジするなら異業種の株、或いは同業種でも他社の株を買うべきです。
自社株買いはリスクの掛け算と言えるかもしれません。